とある針灸師の実情

針灸師・稻垣順也が、終わりのない自己紹介を続けていくブログです。

3月12日の出来事・後編

 

中編の続き】

西洋医学では、喘息を起こす人は、分泌物やむくみのせいで気道(空気の通り道)が狭まっていると言う。

そのため、発作時には、気道を広げる効果を持った薬が使われる。

人が自力で気道を広げる場合は、自律神経の中では「交感神経」の働きが必要となる。

もし「副交感神経」の働きが強まると、気道は……反対に、狭まってしまう。

鍼灸の論文の中には、特定のツボへの刺激で「副交感神経」の働きが高まったと思われるものが有る。

大阪医療技術学園専門学校の播貞華先生が行った実験においては、眉頭に在るツボへの鍼で、心拍数の減少傾向がみられた。鍼で、副交感神経の活動を促す反応が引き起こされたのである。

他に有名な論文としては、向こうずねに在るツボへの鍼で副交感神経の活動が高まったと言うものも有る。

これから僕が「ロシアの魔女」(通称)にする針が、それらと同様に働いたとしたら……まさしく致命的である。

ここでの「波乱」は絶対に許されなかった。

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3月12日の出来事・中編

 

前編の続き】

僕の懸念……それは、「ロシアの魔女」(通称)に対して、近頃、望むような治療成績を挙げられていないということだった。

実は、この五日前にも、僕は彼女に針をしていた。

東洋医学では、顔色や脈の手触りといったものが治療効果を判定する指標となるのだが、針を終えた後のそれらは、いつも悪くなかった。

むしろ、会心の出来だったりした。

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3月12日の出来事・前編

 

『鍼道 一の会』のブログで既に報告してある通り、3月12日の日曜に、大阪医専の卒業生のための勉強会に参加してきました。

blog.ichinokai.info

 

この日を僕は、実に平穏な気持ちで迎えていた。

ゲスト講師としてのプレッシャーなどは特に無く、むしろ、妹分である江見木綿子先生の教師っぷりを初めて見られる楽しみが有った。

江見先生と受講者の皆さんとが成立させる勉強会の雰囲気は、熱意やみずみずしさで満たされるに決まっていた。

そんな現場で、僕自身も学びや刺激を得て帰ることだろうと、疑わずに居た。

 

勉強会の開始は13時30分からだったが、僕は12時前に到着していた。

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2016年度・稻垣家の旅「出会えてよかった」

 

2月28日から3月2日に掛けて、二泊三日で旅行をしました。

行き先は山口県

なぜ山口県にしたかと言うと……

この角島大橋を、海を左右に見ながら渡ってみたかったから。

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僕は自然治癒力が怖い

 

「自然治癒力」という言葉、皆様はお好きでしょうか?

針灸を仕事にしている僕ですが、この自然治癒力という言葉、僕はあまり使わないようにしています。

「針灸で自然治癒力を高めましょう」なんてセリフを言うのには、ちょっと抵抗があるのです。

今回はその理由について書いてみます。

 

若い人のケガって、治りが良いですよね?

治りが良いのは「自然治癒力が高いから」と言えるでしょう。

でも、こういう話も耳にします。

「若い人のガンは進行が速い」と。

なぜでしょう?

自然治癒力が高ければ、ガンの進行も食い止められそうなものなのに。

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僕の共生術

 

我が家では、年に一回、旅行をすることにしています。と言っても、通算でまだ3.5回目ぐらいですが。

 

元々、僕は、自分の人生に旅行の必要性を感じてはいなかったタイプ。

自分では、その理由を「未知のことに対して臆病だから」と思っていました。

ところが、剣山先生という方の見立てによりますと、僕は「仕事のストレスは仕事の中で解消していくタイプ」であり、そのため「仕事ばっかりしてる方が生きやすい」面があるそうで、「趣味を始めても、今度は趣味へのストレスを趣味の中で解消するようになり、結局は趣味が仕事になる」んだとか。

そう言われると、確かに、「未知への恐怖」というよりは、「好きなものが増えることへの恐怖」といった感覚の方が適切だったかも知れません。

剣山先生は「追求心が旺盛な証拠」という風に、僕が短所と見ていたところを長所として解釈し直してくださったので、感動しましたね。

 

一方、僕の妻は、人生にメリハリが必要なタイプらしく、非日常があってこそ日常を頑張れるのだそうです。

そんな妻と幸せに生きていくために、旅行を習慣化するのは当然として……僕個人も旅行を満喫するために、そのメリットをどこかに見付けておこうと思いました。

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僕が怒ること

 

まずは、「逆子」が虚側(と呼ばれる状態)の至陰(という足先に在るツボ)へ知熱灸(ジンワリとした温かさを感じさせる程度のお灸)をした翌日に治ったことを報告しておきます。

 

ただし、エコーで確認してくれたお医者さんへ妊婦さんが「昨日お灸をしてもらった」と語ったところ、「お灸で逆子が治るなんてあり得ない」と完全に否定されたとのことでした。

 

……あのですねぇ。

 

あ。鍼灸を否定されるのは、僕としては構いません。

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プロフェッショナルとは?

 

と、どこか他でも目にしたような問い掛けから書き始めてみました。

針灸師・稻垣順也としては、その条件の一つに、「独自の見立てが出来ること」が入るのではないかと思っています。

今回は、その「独自の見立て」に関わる話を紹介します。

 

顔面神経マヒとか、ギックリ腰とか……具体例としては何でも構わないのですが、鍼灸院と病院との間で競合が成立する疾患について、次のような興味深い食い違いを耳にすることがあります。

 

  • ある鍼灸師の言い分

「すぐに来てくれたら、すぐ治せる。けれど、最初に病院へ行き、注射や投薬をされてから来られると、なかなか治らない。」

 

  • ある医師の言い分
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