とある針灸師の実情

針灸師・稻垣順也が、終わりのない自己紹介を続けていくブログです。

脈診結果が一致しない原因

 

脈診。

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東洋医学における診察法で、個人の感覚に基づいたものですが、各人の診断は意外に一致するものだと感心しています。

要点を、しっかりと共有してから行いさえすれば。

 

特に、「脈には中心が有って、それは皮膚の近くという浅い所に在る場合も有れば、骨の近くという深い所に在る場合も有ること」と「脈の広がりには個性が有って、とても細い脈も有り得ること」という二つの観点にまつわる話を確認しておくことが大切かと思います。

なぜなら、「浅い所で打っている細い脈」に対していきなり指を押し込み過ぎて、脈の中心をうまく捉えられていないために、「脈が見付からない」という声が上がったり、脈の強弱についての診断が分かれたりすることが多いからです。

脈の中心を捉えられた人が「意外に強い」と訴える一方で、中心をまだ捉えられていない人が「かなり弱い」と訴える場面にはよく遭遇します。

 

もう一つ、脈で診断が分かれる原因としては、脈の在るがままを知ろうとする前に、最初から一方的に知りたいことを決め、その時の脈に表現されていないはずのものまで知ろうとする姿勢が挙げられます。例えば、「深く沈めた位置での脈の強さを比べよう」といった感じで。

そもそも、脈の深浅は、生体と環境との関係性によって変わります。

生体が環境に適応しようとした結果の一つとして、脈が一斉に浅い所で打ち始めることが有るのです。

このような場合、生体の活動を真に手助けしたいのであれば、脈診の焦点は「生体が必要な分だけ脈を浮かしきれているかどうか」ということになるはずです。

なのに、生体の事情を無視し、「深く沈めた位置での脈の強さを、その人の左右で比べる」といったことに挑戦したところで、その時に感じ取れる差など大同小異、診断がバラ付くのは当然でしょう。その時の脈は、右も左も、深い位置はあえてなおざりにしているのですから!

 

東洋医学における診察法は、必ずしも難しいものではないと思います。

分かるはずのことを分かる範囲で把握し、分かったギャップに対して順番に対処していけば、それで十分ではないでしょうか。

生体が自力で解決しようとしながらも、なかなかうまく行かず、外部からの助力を必要としている問題は、必ず分かりやすい形で何らかの表現を伴うものなのですから。

本当に難しいと言うか、奥深いテーマとなってくるのは、「診察結果の解釈」と、「対処法の適切な選択」ですかね。